こんにちは、taikiです。
今回は、現在週刊少年ジャンプに連載中の「約束のネバーランド」を取り上げようと思います。
小学生や中学生の間で人気の作品で、孤児院で育てられた子供たちが(凄まじい)逆境と戦い逞しく成長していくストーリーです。
ネタバレは控えめにしますが、嫌な人は本編を読んでからにして頂いた方が良いと思います。
設定として「人間」がいて、人間を食べる「鬼」がいて、食べられる為に養殖された「食用児」の3つのグループがいます。
主人公である食用児のエマ・レイ・ノーマンが鬼と戦うための作戦会議を行っていたのですが、その際の議論が現実社会でもよく見る光景でしたので取り上げたいと思います。
2つ選んだら1つは自動的に取れなくなるトリレンマの構造
議論の背景にある構造はトリレンマです。トリレンマとは何かについては後ほど説明します。まずはストーリーの世界観を追ってみましょう。
人間と鬼と食用児の相関関係
鬼と戦う食用児解放軍のリーダーであるノーマンは、食用児がどうやって自主独立を勝ち取るかについて自分の考えをエマとレイに対して説明しました。
ノーマンの話に入る前に議論の全体像を見ておきましょう。
現状の世界は図解するとこんな構造です。
ポイントとしては、下記3点です。
現状の世界
- 鬼は人間を食べる
- かつて鬼と人間は争っていたが、現在は人間界の人間は食べない契約になった
- 鬼は食用の人間を養殖して自給自足している
鬼と人間はそれぞれ平和に暮らしていました。
食用児は家畜として存在し自我がありません。
しかし、知性を持った食用児が自我に目覚め、鬼に対して反乱を起こします。
食用児反乱後の混乱
- 食用児が自我に目覚めて、自主独立を望み鬼に対して反乱をし始めた
- 鬼は養殖の人間が入手しにくくなり食糧問題に直面
家畜が暴れ始めると食糧供給は不安定になり、鬼が飢えてしまいます。
鬼に食糧問題が勃発です。
ノーマンの世界
ここで食用児が人間界に逃げるという選択肢も考えられますが、そうは甘くありません。
食用児は人間界に行っても「鬼の家畜が紛れ込むんじゃねぇ」といって迫害されることが予想できますので、食用児は人間界に住む場所はないのです。
ノーマンの見えている世界観はこちら。
ノーマンが見えている風景
- 鬼と食用児の共存する平和な世界はない
- 鬼を絶滅させて食用児の平和を勝ち取ろうとしている
ノーマンは鬼への食料供給を断って、兵糧攻めで勝つという作戦で戦おうとしています。
エマの世界
ノーマンと対象的に理想や綺麗事を中心に話を進めようとするのがエマです。
エマの描く世界観はこんな感じ。
エマが見えている風景
- エマは鬼も殺したくはないし、食用児が食べられるのも嫌だ
- 人間と鬼と食用児が共存する平和な世界にしたい
- 鬼が人間を食べなくても死なないように改造すればみんな幸せかもと考えた
エマは「みんなで幸せになろう♡」的な考えで、脳内がお花畑ですね。
残念ながらみんなが幸せになれる構造ではありません。「人間」「鬼」「食用児」のどれか2つを選ぶと残りの1つは自動的に選べなくなります。
この構造をノーマンは理解しています。それがこのセリフ。
エマの現実性に欠けるアイデアをすべて論破し、鬼も人間も食用児も共存出来る理想郷なんてものは存在しないことをエマに対して伝えます。
ノーマンは理想論や根性論を持ち出さずに、結果を追求するプロフェッショナルですね。
そして、エマは前提をぶっ壊しにかかります
エマスペシャル
- 人間の世界でも鬼の世界でもない外の世界に行ってみたらなんとか出来るかも
- 具体的に何をどうするのかのイメージはない
今の世界の外に出て、世界の前提を変えちゃおうというぶっ飛んだアイデアを出してきました。
例えるなら、「地球に場所がないなら宇宙に行けばいいじゃん。酸素?食糧?そんなもんは後回し。とりあえず行ってみよう!」みたいな感じでしょうか。そんなことを言われたら「宇宙兄弟を読んで出直してこい!」と突っ込みたくなりますね。
もちろんエンタメとしての漫画だからこそ、そこにストーリーの展開余地があるのですが、現実社会では、、、厳しいでしょう。
トリレンマを理解する
3つの選択肢のうち、2つを選んだら1つが自動的に選べなくなるという構造をトリレンマといいます。
- ジレンマ(両刀論法)がその選言的前提において二つの選言肢を有しているのに対し、三つの選言肢をもつものをいう。三刀論法。
- 三者択一を迫られて窮地に追い込まれること。
- インフレーション・失業・国際収支の赤字が同時に発生している状態。需要を抑制しても拡大しても三つを同時に解消することはできない。
出所:大辞林 第三版
意味的には3ですね。
トリレンマの議論を少年漫画で展開しているんですから、読者が少年だからといって手を抜かずに面白い構成やストーリーを見せようという製作者サイドの想いが伝わってきます。
せっかくなので、現実社会におけるトリレンマも見てみましょう。
国際金融のトリレンマ
もっとも有名なトリレンマといえば、国際金融のトリレンマでしょうか。
政府が国の経済政策を決める際に、3つの大きな選択肢が与えられます。その3つがこちら。
- 自由な資本移動
- 固定相場制
- 独立した金融政策
簡単にそれぞれをザックリと説明するとこんな感じ。
自由な資本異動:外資系企業が自由に入ってこれるか
固定相場:1ドル=120円固定みたいなやつ
独立した金融政策:お金を自由に刷れるか
この3つのうち、2つを選ぶと自動的に残りの1つは選べなくなります。
例えば、日本、アメリカは「自由な資本異動」と「独立した金融政策」を選択しているので、固定相場制は選べません。
EU加盟国は「自由な資本異動」と「固定相場」を選択しているので、独立した金融政策は選べません。EUとしての金融政策はECB(ヨーロッパ中央銀行)が行うため、各国はお金を勝手に刷れません。数年前のギリシャ危機、自国通貨ドラグマ復活の話はコレ。
鎖国していた頃の日本は「固定相場」と「独立した金融政策」を選択していました。(当時はこの概念を持っていませんでしたが)
議論の構造が約束のネバーランドと同じでしょ?
アラフォー婚活女子のトリレンマ
更に身近な事例、これは厳密にはトリレンマではありませんが80%ぐらいは当てはまりそうなので紹介します。
独身のアラフォー女性が婚活をする際に、男性に求める条件を考えてみましょう。
独身のアラフォー女性の婚活となると、恋愛市場が縮小に向かう中、良い条件が整ったパートナーを射止めるのが少しずつ難しくなっていきます。
男性に求める条件を大きく下記3つとしてみましょう。
- 稼ぎ
- ルックス
- 性格
3つ全部求めると対象が結婚対象者がいなくなってしまう可能性が大きく高まるのはなんとなくご理解いただける方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
現実的なゴールを想定すると何か1つは捨てる覚悟がないといけません。
これもある意味、トリレンマと言えるでしょう。
もちろん全部を満たした方と奇跡的に恋に落ちて幸せな結婚が出来る可能性はゼロではありませんが、現実的に考えるとどうなのかは説明しなくてもご理解頂けますよね?
約束のネバーランドはこんなトリレンマの構造をストーリーの中に持ちこんで、面白く見せちゃうんですからスゴイですね。
まとめ:構造的に不可能なモノを見抜こう
今回は、約束のネバーランドという現在進行中のホットな漫画を取り上げてみました。
このような議論に小中学生の頃から接していれば、大人になって現実的な議論をした際に、
「ははぁ~~ん、こいつは約ネバで言う所のエマだなぁ。脳内がお花畑だぜ」
と気付いて、ノーマンのように現実的なリーダーシップを発揮することが出来るでしょう。
現実社会においては、構造的にどうやっても無理なのに、エマのようなどうやったら実現できるかわからない夢を語ってしまう人が散見されます。
皆さんも脳内がお花畑のエマよりも、ノーマンのように現実的で実現可能なロードマップを描ける人と行動を共にした方が幸せになれるでしょう。
約束のネバーランドがどのようなエンディングを迎えるのかはわかりませんが、私個人としては若い読者に現実を突きつける為にもエマが夢に敗れるような結末になればいいなぁと期待しています。
以上「エマとノーマンの会話に学ぶトリレンマの議論【約束のネバーランド】」でした。
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