こんにちは、taikiです。
コロナで自粛生活の中、いかがお過ごしでしょうか。
私は、こんな機会だからこそ、読もうと思っていて読んでいなかった本を読んでいます。
その中の1つがジョジョ7部、スティール・ボール・ランです。
ジョジョ6部がイマイチ好きになれず、そのまま止まってしまっていたのですが7部を読んで「なんてもったいないことをしていたんだ!」と反省しました。
そんなめちゃくちゃ面白いジョジョ7部のあるシーンで荒木先生の思想が色濃く出ている場面がありましたので、紹介したいと思います。
お前が俺には勝てない理由
主人公であるジャイロは、王族に先祖代々仕える由緒正しき家庭に育ちました。
敵のリンゴォはそんなジャイロを見て、「(お前じゃ俺に勝てないから)君は下がれ」と言いました。
その一方で、ジャイロの隣にいるジョニーに「お前は漆黒の意志を持っているから、俺に勝つ可能性はある」と言いました。
さらにジャイロのことを受け身の「対応者」呼ばわりします。
腕っぷしに自信のあるジャイロはそんなことを言われて引き下がるはずがありません。
怒りをあらわにします。
敵のリンゴォは、戦う理由を己の生長と言いました。
このシーンはバトルが始まる前の何気ないやり取りであり、サラッと流してしまう人も多いでしょう。
しかし、私はこのシーンに込められたメタファーや作者の想いにめちゃくちゃ痺れてしまいました。
このシーンに込められたメタファーを読み解いていきましょう。
このストーリーに込められたメタファーを読み解く
「対応者」と「漆黒の意志」
まず、ジャイロとジョニーを表現する言葉に「対応者」と「漆黒の意志」です。
この2つは、こんな解釈が出来るのではないでしょうか。
対応者:サラリーマン
漆黒の意志:非サラリーマン
もしくは、これでもいいでしょう。
対応者:公務員・会社員
漆黒の意志:企業経営者・自営業者
ジャイロは王族に先祖代々使えて死刑執行人という仕事をしてきたこともあり、常にボスからの指示に対して仕事をキッチリこなします。
その一方で、リンゴォは上からの指示で物事に対応してきたヤツは、常に対応が一歩遅れるから命のやり取りのギリギリの勝負において俺に勝てるわけがないと主張しています。
リンゴォはここに本質的な超えられない一線を引いているわけです。
そして、リンゴォはギリギリの戦いに生きがいを見出しています。これは企業経営者や自営業者が日々迫られる意思決定のことを表しています。
日々、痺れる状況の中で必死に生きてこそ成長があるのです。
↑「お前みたいなサラリーマン野郎とは仕事しねぇ」と言っています。
当然「お前みたいなサラリーマンじゃ相手にならないからやめとけ」と言われたら、言われた人は怒ります。
特に「俺は高学歴で、頭も良いし、立派な企業にも就職して、出世競争でも勝ち残っている」という自称ハイスペ男は、数少ないコンプレックスの1つである「雇われの身であること」を指摘されたら心中は穏やかではいられないでしょう。
父親からも「道を踏み外すな」と反対されます。
このシーンはそんなメタファーが込められていて、表現力がスゴイなぁと関心しました。
社会的な価値観と男の価値
まだまだ話は続きます。
リンゴォは「社会的な価値観」と「男の価値」という言葉を使います。
「社会的な価値観」とはこの時代(1890年頃)で言えば、王族・国家権力・資産家に仕えるエージェント型の立場や身分を指しています。一方で、「男の価値」は自分がやりたいことをして生きるプリンシパル型の立場を指しています。
前時代においては、「社会的な価値観」と「男の価値」が同一のものでした。しかし、資本主義が進行し、自分が好きなことをやって自由に生きるという現代的な生き方が出始めてくると「社会的な価値観」と「男の価値」が分離をしはじめました。
リンゴォは「男の価値」(≒プリンシパル的な生き方)に意味を見出しているということです。
要は組織ではなく個の時代になるということを伝えています。
100年以上も前の舞台設定なのに言っていることはなんだか現代的ですよね。
人間の本質が変わらないのか、作者の伝えたいことが時代設定を乗り越えて入っちゃったのか、、、たぶん両方かな。
光の道、輝ける道
そして、戦いの後に「光の道」、「輝ける道」を進めとリンゴォはジャイロに伝えました。
「光の道」、「輝ける道」とは「何事も自分で決断して心を自由にして生きていくこと」でしょう。
死ぬ前のメッセージとしては強烈です。
この時、ジャイロは人の指示で生きるサラリーマン(対応者)から自分の意志で生きる男(漆黒の意志を持つ者)に生まれ変わりました。
人生を変えた瞬間を描くジョジョシリーズ屈指の名場面ですね。
まとめ:「光の道」、「輝ける道」を突き進もう
今回のストーリーは長いジョジョの中のほんの一部分の話でしかありませんが、ジョジョ全編を通じて似たようなテーマがいろんな角度から語られます。
3部ではこんなセリフ
5部ではこんなセリフ
私がジョジョの奇妙な冒険を好きな理由は、まさにこれで「人の指示で生きず、自分の意思で生きろ」という荒木先生の想いに共感するからなんでしょう。
映画でも小説でも作者のアツい想いがにじみ出る作品は、一本筋が通っていて見ていて気持ちいいですし、学ぶことが多いですね。
ぜひ、ジョジョ7部のスティール・ボール・ランをまだ読まれていない人がいらっしゃいましたら、自粛期間のこの時期に手にとって見てください。
以上「仕事が面白くないと思った時に読んでほしい漆黒の意志の話【ジョジョ7部】」でした。
あわせて読んでほしい
荒木先生は漫画の中にいろんなメタファーを上手に落とし込みます。すべての漫画において最も震えたと言ってもいいぐらい感動したメタファーがジョジョ5部にあります。ジョジョのメタファーに興味を持った方はこちらも参考にしてみてください。
プリンシパルと言えば経済産業省をつくった白洲次郎でしょう。
対応者と漆黒の意志は金持ち父さん貧乏父さんのEmployeeとSelf Employee/Business Ownerの違いでしょう。
このストーリーが掲載されているのは8巻です。
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