チェンソーマン考察!「友情・努力・勝利」に必要なものがわかった話

こんにちは、taikiです。

今、もっともホットな漫画と言えば、なんでしょうか?

『鬼滅の刃』?

セールス的にはそうかもしれない。

私の中では圧倒的に『チェンソーマン』です。

どのぐらいスゴイかと言うと単行本だけでは我慢できずに、週刊少年ジャンプのバックナンバーを全部購入して最新話に追いつき、毎週月曜のジャンプの発売を楽しみに待ってしまうぐらいスゴイのだ。

ジャンプを最後に買ったのは確か、悟空が魔人ブウと戦っていた頃のような気がする(遠い目)

少年から青年を通過してすっかり中年になってしまった私を再び少年ジャンプに引き戻すぐらいの引力がある漫画が『チェンソーマン』なのである!

そんな大ヒットを予感させる『チェンソーマン』ですが、少年ジャンプ王道の「友情・努力・勝利」から大きくかけ離れた設定で、違和感しか感じません。

今回は違和感の正体を解明しつつ、『チェンソーマン』を紹介させて頂きます!

『チェンソーマン』の概要と抑えて置きたいこと

『チェンソーマン』の世界観とあらすじ

あらすじはこちら。

「悪魔」と呼ばれる存在が日常に蔓延る世界。
少年デンジと「チェンソーの悪魔」のポチタは、死別した父親の借金を返すため、悪魔を駆除する「デビルハンター」を主な仕事としながらなんとか生計を立てていた。

ある日デンジは、仕事を斡旋していたヤクザに騙され、「ゾンビの悪魔」によってポチタと共に殺害されてしまう。

しかし、ポチタはデンジの血を飲んだことで蘇生し、デンジの身体を修復するためデンジの心臓となる。

復活したデンジは「チェンソーの悪魔」へと変身する力を手に入れ、ゾンビの集団を一掃する。

撃退に成功したデンジは現場に駆け付けた公安のデビルハンターであるマキマに導かれ、その身を公安によって管理されることになる。

出所:Wikipedia

「悪魔」っていう悪さをする存在がいる世界で、借金苦の主人公デンジが悪魔と契約して生きていくっていう話です。

マズローの欲求5段階

チェンソーマンを読む上で、人間の欲求を5段階の階層で理論化した自己実現理論について抑えておくと理解がスムーズに進みます。

自己実現理論:
ピラミッド状の階層を成し(なお、マズローの著書にはピラミッド階層についての言及はされていない)、マズローが提唱した人間の基本的欲求を、高次の欲求(上)から並べる。

  • 自己実現の欲求 (Self-actualization)
  • 承認(尊重)の欲求 (Esteem)
  • 社会的欲求 / 所属と愛の欲求 (Social needs / Love and belonging)
  • 安全の欲求 (Safety needs)
  • 生理的欲求 (Physiological needs)


出所:Wikipedia

ザックリと言ってしまうとこんな感じかな。

  • Ph1:飯食いたい、寝たい、モテたい
  • Ph2:安全でいたい
  • Ph3:仲間がほしい
  • Ph4:認められたい
  • Ph5:自分らしく生きたい

ステップが上がるごとに生物としての本能から、人間らしさに変化していくことがわかります。
マズローの5段階欲求と言われますが、実は6段階「自己超越」という、自分を超えて何かを実現したいといった悟りのフェーズがあるとも言われています。

  • (Ph6:自分を超えた大きな何かになりたい)

少年漫画の主人公たちは、何かしらの目的を持って冒険をしています。
その目的はマズローの5段階欲求で言うとどの段階から由来するものなのかを見てみましょう。

マズローで見るジャンプの主人公たち

『ONE PIECE』/ルフィ

ジャンプを代表する漫画と言えば、『ONE PIECE』は外せません。
その主人公であるルフィはマズローで見るとどこにいるのか。言うまでもなくPh5の自己実現にいます。

海賊王になる!というのは自己実現以外の何者でもありません。
飯とか安全とかそんなもんは屁とも思っていないルフィは、仲間だって、自らの目的達成の為に必要なツールです(仲間を大切にしていないとは言ってません)。

ジャンプ漫画の主人公のあるべき姿です。

『鬼滅の刃』/竈門炭治郎

2020年もっともバズった漫画である『鬼滅の刃』の主人公である炭治郎もマズロー的には鬼の驚異にさらされて身の安全がなかったPh2からスタートします。

最初は冨岡義勇に『生殺与奪権を与えるな!』と怒られましたが、修行を通じて仲間も増えて、認められて、気がつけばPh5です。

更にラスボスである鬼舞辻無惨と対峙する中で、人類の存続を意識しはじめ、Ph6である自己超越の領域に入り始めます。ここまで達するともはや自分のことなんて逆にどうでもいい。

もっと大きな志の一部になりました。

『チェンソーマン』/デンジ

そして、今回取り上げた『チェンソーマン』の主役であるデンジについても見てみましょう。

デンジは、臓器を切り売りするほど追い込まれた状況であり、食事は食パン1枚という食事することもままならない状況です。

夢を語るべき少年漫画の主人公がまさかの臓器を売って、飢餓状態から夢も希望もない貧困の象徴として描かれています。

マズロー的Ph1の主人公の漫画ってあったでしょうか(誰か知っている人がいたら教えてください)。

物語はここからスタートしてデンジがどのように成長していくのかを描くのですが、これ以上掘り下げるとネタバレになるのであとはご自身で確かめてください。

飯が食えないと「友情・努力・勝利」はできない

主人公であるデンジは、デビルハンターという職業について生活が安定してきます。

しかし、マズロー的Ph1にいた期間が長いと人は簡単にはPh5にはいけません。

経済的な豊さを獲得しても心の豊さを獲得するには時間がかかります。

主人公であるデンジが悪魔に襲撃されて、仲間が命を落としました。次に備えてデンジたちを岸辺さんという最強の男が鍛えにやってきます。
その際に岸辺さんが質問しました。

『チェンソーマン』4巻より(C)藤本タツキ/集英社

『チェンソーマン』4巻より(C)藤本タツキ/集英社

仲間が死んだって「別に〜?」ですし、敵を取るなんて発想はありません。

『チェンソーマン』4巻より(C)藤本タツキ/集英社

『チェンソーマン』4巻より(C)藤本タツキ/集英社

そして、「面倒を見てくれるほう」の味方につくという、信念のなさ!

ここで「けしからん!」と怒ってはいけません。マズロー的にはPh1につい最近までいたのですから、仲間とか自己実現とかそんなもんはずっぅーーーっと先の存在であり、まずは自分が生きることの方が優先順位が高いのは当然でしょう。

今まで普通に感じていた「友情・努力・勝利」も実は、安定した食事や身の安全があってこそ成立するものであり、そこがない状態では「友情・努力・勝利」なんてただの理想論にすぎなかったのです!

バブル経済と同時に黄金期を迎えた週刊少年ジャンプは、「友情・努力・勝利」を看板にしてきましたが、遂にその看板をおろしてしまうのでしょうか。

ここから先はネタバレになるので、皆さん自身がデンジの行く末を直接見ましょう(まだ連載中でどうなるかは謎ですが)。

まとめ:衣食足りて礼節を知る

『チェンソーマン』1巻より(C)藤本タツキ/集英社


2021年にブレイクしそうな『チェンソーマン』ですが、このようにジャンプの前提を疑って、ベースの部分を崩して物語がスタートしています。

マズローの欲求をベースにその異質さについて考えてみましたが、普通に考えて、『衣食足たりて礼節を知しる』という言葉もある通り、人間らしい最低限の暮らしがあってこそ、礼儀や節度が身に付きます。

衣食足たりて礼節を知る
衣服や食糧といった生きるために必要なものが十分にあるようになって初めて、礼儀や節度といった、社会の秩序を保つための作法・行動を期待することができるようになるものである。
出所:Wiktionary

経済格差や貧困問題の根っこにある心の貧しさが垣間見える『チェンソーマン』を通じて、触れてみてください。

そして、物語はこのスタートからとんでもない方向にぶっ飛んでいきます。

この続きは次回以降のネタバレ考察記事で取り上げますのでぜひ、本編を読んでから準備しておいてください。

以上「『チェンソーマン』を読んで「友情・努力・勝利」に必要なものがわかった話」でした。

合わせて読んでほしい

チェンソーマン考察記事第二弾です。ネタバレありますが、チェンソーマンの根底にあるメタファーについて解説しています。

二項対立で読み解くチェンソーマンとマキマの考察【中国vsアメリカの話?】
こんにちは、taikiです。 『チェンソーマン』考察第二弾として、二項対立という切り口で読み解いてみます。 作品の中で、対立する概念として、「人間と悪魔」を筆頭に、「悪魔の転生vs一度も転生していない超越者」などのように二項対立...

オマケ

いろいろと関連図書も進めたいのですが、なにはともあれ『チェンソーマン』を読んでみてください。ちなみにebookだと1巻の3話の途中まで試し読みができます。

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