こんにちは、taikiです。
「お金がないと不安なので貯金していたら、お金を貯めることが目的になっちゃって必要以上に節約して心が貧しくなっちゃった」
「健康になるために運動を始めたのに、強度の高いトレーニングにハマって身体を壊しちゃった」
↑のように目的を達成する為にやっていたのに、気がついたらその為の手段が目的になっちゃったみたいな話は誰しもが聞いたことありませんか。
鬼滅の刃に4巻、5巻の那田蜘蛛山に住む鬼の一家の話がまさに「手段が目的になっちゃった」話です。
鬼滅の刃は「鬼は人間の欲望のメタファー」という観点で読むと面白いという話をしましたが、今回は「人と繋がりたい」という欲望が暴走した話でもあります。
「鬼は人間の欲望のメタファー」「手段が目的になる」という2つの切り口で読み解いていきましょう。
家族の絆を求めた鬼「累」
親のありがたみは子供の頃にはよくわからない
累は身体の弱い子供でした。
鬼になって身体の弱さを克服したと思ったら、人を喰うようになってしまいました。
それを見てしまった親は絶望して、我が子を殺して自分も死のうとしました。
それをみて累は憤慨しました。
子供に親の想いはなかなか伝わりません。
子供が成長して大人になっていろいろ経験してみてはじめてわかることがほとんどでしょう。
その一方で、親が子供を守って命を落とした話には感動しました。
本物の絆を求めるようになります。
恐怖支配のパワハラでは絆は生まれない
累は絆を求めて、家族という名の組織を作ります。
その組織は力による恐怖支配のパワハラ型組織(旧日本軍的なやつ?)でした。
組織の役職は父、母、姉、兄みたいな名前にして家族的な雰囲気を出そうとしましたが、オーナー経営者が「社員はワイの家族みたいなもんやで、ガハハハ!」という雰囲気で、構成員は面従腹背です。
面従腹背(めんじゅうふくはい)
うわべだけ上の者に従うふりをしているが、内心では従わないこと
出典:三省堂 新明解四字熟語辞典
残念ながらパワハラ統治では本当の絆は生まれません。むしろ新たなパワハラを生み出します。
父(役)による母(役)へのDVとなって表れます。
こんな組織の最下層にいると辞める決断は出来ずに、思考停止になって誰かに介錯してもらうのを待つようになってしまいます。
パワハラ組織が生み出したものは、新たなパワハラと思考停止な最下層の弱者でした。
世間では聞こえのよいキラキラした会社でも内部はパワハラ組織で、若手がうつ病になったり、最悪の場合には自殺をしてしまうことが度々おこります。
鬼の組織で起きていることは、現代の人間社会の縮図そのものです。
手段が目的になってしまった
累は自分の家族(≒組織)を作り込んでいく過程で、本来自分が築きたかった家族の絆(≒目的)がどのようなものであったかわからなくなってしいました。
組織の構成員にも指摘されます。
累は鬼として強かった為に、誰も累に意見することが出来ず、裸の王様状態です。
気がついたら、虚しさしか残りませんでした。
バカだなぁと思うかもしれませんが、冒頭でも述べた
「お金がないと不安なので貯金していたら、お金を貯めることが目的になっちゃって必要以上に節約して心が貧しくなっちゃった」
「健康になるために運動を始めたのに、強度の高いトレーニングにハマって身体を壊しちゃった」
みたいな話は探せばいくらでも出てきます。
我々だって同じような過ちを犯すことはあるでしょう。
つまり累は鬼の形をしていますが我々人間がやってしまう過ちを表しているのです。
外部の意見によって気付く新しい価値観
炭治郎はそんなものは絆でないということを累に伝えます。
裸の王様に、「あなた、裸ですよ!」と言ったのです。
もちろん、累は最初は憤慨します。
憤慨して炭治郎を殺そうとします。
ネットで違う価値観に触れた際に、「自分の価値観が否定された!?」と勘違いしてやってしまう感情まかせのクソリプの応酬みたいなものですね。
炭治郎の言葉にカッとならずに「なんでそう思うの?どこをどう修正するともっとよくなるの?」と人の意見に耳を傾ける柔軟性があれば違った結果になっていたでしょう。
その後、冨岡義勇に斬られてしまいますが、炭治郎とのやり取りを通じて死ぬ間際で親のことを思い出し、謝罪し、感謝することが出来ました。
累は死ぬ間際になって違う価値観に触れ、異文化交流したことによって視界が広がりました。
親の有り難さに気付き、大人になりました。
ここで累は死んじゃいますが、死ぬ前に気付いてよかったね。
現実社会における手段が目的になっちゃった例
累がやってしまった手段が目的になってしまうことは常に誰の身にも起こります。
個人でも組織でも起こります。
例えば、ノルマの厳しい営業組織、仮にS銀行という会社だったとしましょう。
S銀行は融資取引をするためには、新しい融資候補先のお客さんに会って融資のニーズがあるかどうかを聞いて(新規開拓)、融資の検討・審査を行って、条件を交渉し、契約としてまとめてはじめて融資が実行出来ます。
ザックリと4つのフェーズにわかれます。
- 新規開拓
- 検討・審査
- 条件交渉
- 契約・融資実行
ある程度新規件数のボリュームは必要ですが、本質的にはそれぞれのフェーズごとの顧客転換率(CVR:Conversion Rate)をあげることを考えるべきでしょう。
しかし、営業パワハラ型組織の昭和の残り香を宿した経営陣はこんな大号令を発します。
1人あたり新規開拓1日1件、年間240件は新規開拓しろ!
現場の人達もサラリーマンなので、怒られたくないから数値をこなすために必死になります。
上司からはパワハラ型の件数管理で、激詰めの日々です。
↑こんな感じで上司に詰められます。
その結果、新規件数をこなすために絶対に可能性が無いような先にも訪問して件数を稼ぐと言った本末転倒なことが起こります。
営業のキツイ会社ではよくある光景です。
今でも探せばこんな組織はいくらでも出てくることでしょう。
まとめ:本来の目的を見失わずに自問自答を繰り返しつつ、人の意見にも耳を傾けよう
今回は、手段が目的になってしまうというよくやりがちな過ちを切り口に鬼滅の刃を読み解いてみました。
累のように何事も最初は強烈な目的があったはずですが、時間の経過とともに目的を忘れて、目の前のことに追われてしまうと手段が目的化することがよく起こります。
そうならないためには、本来の目的は何で、今行っていることはその目的に対して本当に正しいのかを常に自問自答しましょう。
また、自分1人だったり、いつも同じメンバーと考えていても手段が目的化してしまいがちなので、外部の人や多様な価値観に触れて違う視点からの見え方も参考にしましょう。
手段の目的化は時代に関係なく起こりうる人間が本来持っている性質とも言えるような現象です。
常日頃から「今、俺は鬼滅の刃の累みたいになっていないか?」と目的を見失っていないか意識するようにしましょう。
以上「【鬼滅の刃】家族の絆を求めたけど手段が目的になっちゃった鬼「累」」でした。
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吉原遊廓編に登場する「堕姫」と「妓夫太郎」は嫉妬のメタファーです。嫉妬は誰にでもある自然な感情ですが、それがある発想と結びつくと恐ろしい結果が導かれます。
コメント
[…] 響凱の次に戦う那田蜘蛛山の鬼「累」についても「鬼は人間の欲望のメタファー」として読み解いています。合わせてお楽しみください。 […]