安定した絶望は水戸黄門!『バビロン』野崎まど 考察と続編予想

こんにちは、taikiです。

Youtubeで本や漫画を紹介するチャンネルが結構好きでよく見るのですが、その中で、『ほんタメ』というチャンネルをよく見ています。MCのお二方の本に対する愛がめちゃくちゃ伝わってきて、楽しそうに自分の好きな本について語る姿がいいんですよね。やはり好きには勝てない。

その中で、こちらの動画で紹介されている本が気になって読んでみました。

今回はこの中で取り上げている『バビロン』シリーズについてとりあげてみようと思います。

『バビロン』概要

あらすじ


東京地検特捜部の捜査官として働く正崎善(せいざきぜん)は、ある製薬会社の新薬に対する虚偽の研究報告作成を依頼したというアグラス事件の捜査を行っていた。

その捜査の中で、ある大学教授の自殺と同時期に行われていた選挙の不正とその両方に関与している謎の女性にたどり着く。

その女性は曲世愛(まがせあい)。

曲世愛に近づいた人間の謎の死を遂げるという奇妙な現象を追う正崎は、無事に事件の真相にたどり着けるのか。

と、まぁ、そんな感じの東京地検特捜モノのお話です。

ネタバレなしの感想

「ほんタメ」の動画の中で、本シリーズを「覚悟のある奴だけ読め」とMCのあかりさんが仰っています。確かに救いがない物語ですので、「気持ちよくなりたい」「綺麗なものが読みたい」という方は読まないほうがいいでしょう。

シリーズをネタバレしない範囲で説明するとこんな感じかな。

  • 『バビロン1』:推理モノ×超常現象
  • 『バビロン2』:自殺哲学×超常現象
  • 『バビロン3』:マイケル・サンデル×一人スタンドバトル無双

現代ドラマに一人だけファンタジーもののキャラが紛れ込んで無双するというお話です!

 
 
 
 
 
 
 
ここからネタバレあり。

俺の妄想解釈

『バビロン』とはどんな作品だったのか→水戸黄門

シリーズ全編を通して、圧倒的な曲世愛は麻雀漫画で言えばアカギ、グラップラー刃牙で言えば範馬勇次郎、ファブルで言えば佐藤です。

この例えで伝わったでしょうか?要は圧倒的に強いってことですね。

正崎善の周辺で事件やトラブルが発生して揉めに揉めるけど、圧倒的な強者であるキャラが登場して決着をつけて(解決ではない。ここ大事)、お決まりのエンディングになるというオチです。

本シリーズに限って言えば、お決まりのエンディングが絶望というだけで、安定感抜群。

とは言ってもシリーズがそこまで長く続いている訳ではなく、全3巻となっているので水戸黄門感は『バビロン2ー死ー』で完成するイメージで捉えておくといいでしょう。

一人だけスタンド使いが紛れ込んでいる


本作品は東京地検の捜査官である正崎が事件を追うところから始まります。

最初は多くの方が、現代ドラマのようなミステリーとして現実社会を想定して読みすすめるでしょう。

しかし、徐々に曲世愛の異常さがわかってくると「ん?ありえなくね?」としらけちゃう人もいるかもしれません。いや、いる。絶対にいる。

それは最初から前提が違います。

これは現代社会にジョジョでいうスタンド使いが紛れ込んでいると解釈するとスッとします。

スタンドとは
作者の荒木飛呂彦によれば、スタンドとは超能力を目に見える形で表現したものである。例えば、「曲がるスプーン」や「破壊される壁」などといった超能力の影響を受けた物体を描くのではなく、超能力そのものに姿を持たせて絵に描くことができるようにしたものが、スタンドである。
出所:Wikipedia

要は、敵キャラだけがファンタジーであり、特殊能力(スタンド)を使います。

スタンドはスタンド使いにしか見えないという特徴がありますので、曲世愛以外の人間には見えません。だから不自然に人が死んでいくわけです。

正崎は超常現象のような異常性(≒スタンド)を感じつつも信じられずに曲世愛と戦いました。

当然、コテンパンにされます。

そんな無理ゲーを毎回するから、キッチリと絶望させられるわけです。

続編『バビロン4 -極-』(仮)について考える

『バビロン』は続編があるという噂があります。確かに曲世も正崎も生きているので、続きは書けるでしょう。

ただ、ストーリーの結末は簡単に予想出来てしまいます。

「安定した絶望提供型の水戸黄門」でありますから、当然、結末は絶望縛りです。

これ以上、読者に絶望感を味合わせるのは主役である正崎善とその家族しか残っていません。

もしくは、曲世愛本人が死ぬことによって完結する『セブン』型の結末でしょうか。

個人的には予想ついちゃうし、もう惰性になっちゃうからもういいかな。ただ、人は知っている結末を安心して読みたい生き物でもあるので、続編出たら読んじゃうんだろうなぁ。

なんて思っています。

作品の中で気に入ったところ

「いいか、大事なのは結果じゃない。振り返ったときに誇れる自分であるかどうかだ。」
出所:『バビロン1 ー女ー』

正崎が部下の文緒に言ったセリフです。これが実にジョジョっぽいいなぁと思いました。
↓これじゃんって思いましたよ。

ジョジョの奇妙な冒険5部より

☆☆☆

もちろん、身体はつかれるが、それでもお釣りが来るだけのリフレッシュ効果があると感じている。
出所:『バビロン2 ー死ー』

捜査に行き詰まった正崎が、警視庁の12階の剣道場でリフレッシュするシーンです。
やっぱり何かに詰まったら強制的シャットアウトして、違うことに没頭する(フロー状態)必要がありますね。
私も趣味で武道をやっていることもあって、すっごくよくわかるってなりました。

これはリアリティーがあっていいです。

☆☆☆

「正しいとは何かを考え続けることだ」
出所:『バビロン2 ー死ー』

正崎が正義について考える場面で、「正義の答なんてない」という答をもっていて、常に探し続けることだっていうのは物事を探求する人が最後にたどり着く真相みたいで好きです。少年漫画の最終回で主人公がよく気付くやつですね。それを中盤に出しちゃうんだからいいよね。

☆☆☆

「加点を求めるより減点を恐れる。何かをしてマイナス点がつくくらいならば、何もしない0点を選ぶんです。」
「恥の文化か」
出所:『バビロン3 ー終ー』

アメリカ大統領が日本の動きを部下と話している場面で、日本の「恥の文化」に触れるシーンがあります。これは『菊と刀』ですね。戦前に書かれた本であるのに現代でもアメリカ人は日本人を語る際にこれをベースに考えるのでしょうか。確かに同意出来る部分はありますが……これはアメリカ人に直接聞いてみたい。

この小説のルーツ

たぶん、作者は『ジョジョの奇妙な冒険』が好きです。曲世の能力のイメージはスタンド。善と悪で苦悩する部分は、荒木先生っぽいです。

そして、この本を読んでいると思われます。

そして、哲学っぽいことは好きなんでしょう。もろにマイケル・サンデルのトロッコ問題も引用していましたね。

あと3から舞台がグローバルになりますが、その中で日本人の恥の文化にアメリカ人が触れるシーンがあります。『菊と刀』ですね。

まとめ:『バビロン』とは安定絶望×一人スタンドバトル無双である

『バビロン』とはキッチリと絶望感を味あわせてくれる作品です。

最後の方で曲瀬が登場し、「おお!!曲世タイム〜今回はどんな形で絶望させてくれるのかな?」となります。

これは水戸黄門が出てきて印籠を出すのと同じ仕組みです。

ハッピーエンドが嫌いな人が安心して読める作品になっておりますので、絶望マニアの方には安定した絶望を提供してくれる本作をおすすめします!

以上「安定した絶望はもはや水戸黄門!『バビロン』シリーズ/野崎まど」でした。

オマケ

バビロン、まずは1からでしょう。

漫画版も出ています。


アニメ化もされています。

アニメはちょっと細かい点は修正を加えられていますね。いろいろと問題があったのでしょう。

コメント